| 次の日、メトロに乗ってチャプルテペック公園に出掛けた。 そこはメキシコ・シティーのど真ん中に作られた市民の憩いの場で週末ともなるとたくさんの人が訪れる。 特に世界的に類を見ないコレクションを誇るメキシコ国立人類学博物館ではマヤ・アステカ遺跡をはじめとしたメキシコ各地に点在する遺跡から発掘された貴重な秘宝を収集、展示しており、学術研究に役立てられている。 この世界有数の博物館を訪れるだけでもメキシコへ行く価値が十分あるだろう。
1964年秋、メキシコの天才建築家ペドロ・ラミレス・バスケスの設計によって完成されたユニークなデザインの石造り建築は広大なパティオを取り囲むような形になっていて、パティオ中央の巨大な石柱から水が流れ落ちる噴水はまさに滝を思わせる。 博物館見学に丸一日費やしても全てを把握し切れず、興味が尽きなかったので滞在中に三回も通った。 平日は比較的スムーズに入場でき、一般客に混じって多くの幼稚園児や小・中・高校生が団体で訪れ、博物館の学芸員からレクチャーを受けながら遺跡から発掘された土器や石碑をスケッチしていた。 また大学生や研究員らしき人たちが各々の研究に没頭する姿も見られた。 週末は朝から長い列を作って待たなければ中に入れない程、混雑していた。 まさに生きた歴史を学ぶには最高の教材として人類学博物館はメキシコ人の宝物として身近に存在する。 羨ましいことにメキシコ人なら誰でも無料で利用することが出来た。
博物館と道路を隔てたすぐ近くには動物園や植物園があり、広大な敷地を持つ園内には多くの家族連れが溢れていた。 またメキシコの有名な画家タマヨの美術館や近代美術館に足を運ぶと今まで観たこともない素晴らしい絵画コレクションに見惚れることが出来る。公園を見下ろす小高い丘の上にはチャプルテペック城があり、その昔メキシコ総督の邸宅として、また後には歴代大統領官邸として使われていたが、現在は栄華を極めた歴史を伝える国立歴史博物館として自由に見学出来る。
メキシコ・シティーにいる間、毎日のようにチャプルテペック公園で時を過ごすうち、その魅力にすっかり虜になってしまった。 そこはかつてアステカ王の保養地として、その後、植民地時代にはチャプルテペック城が建てられ、メキシコ独立に至る歴史の舞台として、まさに大都会という砂漠の中にあるオアシスで知的好奇心を存分に満たしてくれる。 |